マニット

好きな歌詞をただただ訳すだけの人

2016年の作詞家│②ジョンガンジー「歌詞を書くのは自分の日記帳を見せているみたいで恥ずかしい」

元記事ize

一日中人間について回る影(F(X)「尾行」) 、雷と稲妻(EXO「THUNDER」)。 今度は太陽に片想いする地球と、そんな地球に片想いする月の物語だ。Lovelyzの新たな3部作を知らせる「DESTINY」は、アイドルの歌詞では新鮮な比喩を度々見せてきたジョンガンジー作詞家の作品であり、歌詞は太陽と地球と月の関係に関する参考書にしてもいいほどに具体的だ。こうして、何度もじっくりと読みたくなる歌詞を書いていながらも、彼女は作品を見せることが毎回とても恥ずかしいのだと言った。

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SMエンターテインメント(以下SM)以外の事務所と作業するのは初めてか。

ジョンガンジー:「ジョンガンジー」という名前では初めてだ。まず作詞を始めることになったきっかけから説明しなければいけないと思うが、幼い頃から知っている友人の一人がSM A&Rチームに入っていて、私に作詞をしてみないかと提案してきたのだ。会えば二人だけの表現で果てしない想像を繰り広げる「宇宙での会話」を交わしていた友人で…。そうやって話していた空想みたいなものを歌詞にしてみたらどうかと聞いてきた。初めはずっと拒否していた。小さい頃から音楽はとても好きだったが、直接書くのは専門家の仕事だと考えていたから。どうしても私はあまりに実力不足だから、恥ずかしい作品が出るのではと思っていた。



それがどうして承諾することになったのだろうか(笑)。

ジョンガンジー:まずその友人がSHINeeの「Sherlock」を作り上げていくのを見守りながら、この友人なら私の恥ずかしい文章を上手く整えてくれるだろうという信頼が生まれた。ちょうど私も別の知人の頼みで雑誌にコラムを書く作業を手伝いながら、文を書くことを覚える過程にいたので、目をつぶって歌詞を一度書いてみることにしたのだ。それがSHINeeの 「PUNCH DRUNK LOVE」という曲だ。だから、今までSM以外の会社とあえて作業をしなかったというのではなく、私がこの業界で知っている人がSM A&Rチームだったその友人しかいなかったからだ(笑)。そのうちその友人がWoollim Entertainmentへ移ったので、自然とそちらの仕事を始めるようになった。



「DESTINY」はLovelyzの「新たな3部作」の中の一番目の曲だ。今までLovelyzが見せてきたキャラクターから大きく抜け出してはいないが、少し違う方向を提示するのが課題だったのではないか。

ジョンガンジー:Lovelyzはデビューの時からいつも興味を持っていたので、既存の確かに決められているコンセプトや方向性から少しでも変わってしまうことに警戒しながら、注意深く作業を進行した。「DESTINY」がLovelyzの「新たな3部作」の始まりだという事実は曲が公開された後に知ったし、デモを聴いた時には、以前の音楽に比べてもう少し悲しくて成熟したという感じが強かった。既存の曲達が片想いの「ときめき」のようであったならば、今回の曲はときめきではなく切なさが入ったというか。しかしそれを「あなたのせいでとても辛い、私を見つめて」と直接的に表現してしまえば、Lovelyzが今まで積み上げてきた感情線が崩れる気がした。それで歌詞もやはり感情表現よりも状況の設計という面により集中したし、見るだけでも胸が痛む対象を探していたら「太陽に片想いする地球に片想いする月」が浮かんだのだ。



「静かな君のその心が波打ちますように」「傾いた君の心では 季節が呼んできた温度差がひどいのに」「一度私は彼女を遮って立って 光の指輪をあげたいのに」などの太陽と地球、月の具体的な現象まで歌詞に溶け込ませたことに驚いた。

ジョンガンジー:作業しながら、あまりにも科学的なのではないかと心配していたが、太陽-地球-月の関係を知らずにその場所に人を代入した時にも、それ自体が納得いく歌詞にできるようにたくさん練った。解釈を知らずに聴いても曲が言おうとしていることが伝わらなければならないから。実は中学教育過程以上の内容は歌詞では扱わないようにしていて、あまりにも難しかったり暗号のように意味を隠す作業は避けようとしている。私が知っている内容が間違っていなかったか、常に検証したりもして。



以前に作業したEXOの「THUNDER」も稲妻と雷の特徴を使って解いた歌詞だったが、もともと地球科学分野に興味があるのか。

ジョンガンジー:そうでもない。中学と高校の成績表でも見せてあげたい(笑)。いつも私の歌詞では人が優先だ。月や陰、雷という比喩の服を脱がした時、その場所には裸の感情の人間が立っている気がする。そこに服を着せてあげることが、私が書く歌詞の役割であって。ファッションというものは、時が経って振り返ると「私がこんなものをどうして着てたの?」という気持ちになったりするでしょう?でもクラシックなスーツやドレスはいつまでも素敵に見える…。歌の中の感情に、そんなクラシックな服たちを着せてあげたかったのだと思う。時が経っても、もしくは全世界の誰が聴いても共感することのできる表現?それで自然と比喩、その中でも自然現象のほうの比喩が多くなった。



比喩の題材は、主にどこで選んでいるのか。

ジョンガンジー:本当にその時その時で違う。例えばF(X)の「尾行」は、歌をずっと聴いていたら知らないうちに「私はマニマニット」と口ずさんでいた。そこから出発して「マニット」をコンセプトに作業することになって、自然に影という題材へ発展させることができた。私のデビュー曲であったSHINeeの『PUNCH DRUNK LOVE』は道を歩きながらデモ曲を聴いていて、リズムに乗る私の足取りがボクシングをする人のステップみたいだと思って書くことになった。本当に、私の観察力と想像力は全く優れている方ではない。日記帳に書き殴るような内容が歌詞になるので、作業をするときはいつもすごく恥ずかしい。私の日記帳を誰かが盗み見てるみたいな…



特に関連教育を受けたことがないと、作業の過程が手に余りはしないか。

ジョンガンジー:作詞家として、弱点がとても多い(笑)。作業をするたびに「どうしてこんな風にしか書けないんだろう?」といつも思う。それで曲の依頼が入ると半分ぐらいは書けずに終わる時が多い。恥ずかしくて、到底会社に提出ができないのだ。こんな歌詞が万が一採用されたら、そのチームに悪いことをしてしまうことになりそうだから。締め切りも、すごく長くかかる方だとよく言われた。F(X)の「初めての親知らず」は、最も早く完成したけれど、同時に最も長くかかった作品でもある。歌詞自体は一日で書いたけれど、当時は会社がその歌詞を好きじゃなかったと言っていた。2~3個ぐらい歌詞をさらに書いたけれど全部採用されず、3ヶ月経ってから初めに書いた歌詞で進行することになったという連絡を受けた。イ・スマン先生が後になってその歌詞を見て、良いとおっしゃったという話を聞いたのだが、言葉では表現できない、ものすごく光栄なことだった。



作詞が本業ではないと聞いている。

ジョンガンジー:平凡に会社に勤めながら、作詞の依頼が来れば書いているのだが、正直依頼がたくさん入ってくる方ではない。まだ、本業と平行するのに大変なレベルではないのだ。会社でも、私が作詞をしているということは誰も知らない。知っている人は、先程話したA&Rの友達と私の税理士だけだ。個人的に良いことは、作詞を始めて、新しい挑戦があまり怖くなくなった。友達とストーリーを考えてコンセプトを作りながら脱出ゲームカフェもオープンさせてみたし、映像作業もやっている。



では、作詞家として最も満足するのはどんな時なのか。

ジョンガンジー:私はインターネットもあまりしないし、歌詞に対する反応を探してみたりする方でもないので、特別やりがいを感じることもほとんどない。「作詞家」という呼称自体がまだとても慣れないし。あぁ、こんな面白味はある。時々親戚の子ども達に会うと、私が書いたことも知らずに、この歌の歌詞がどれほど素晴らしいか、そこにどんな意味が込められているのか等、私に一生懸命説明してくれる。もちろん比較にはならないけれど(笑)、そういう時に度々「あぁ、スーパーヒーロー達はこんな気分なのかな?」と思う。



他の人達の歌詞を見ながら、まだ学ばなければならないと考えたりもするのか。

ジョンガンジー:小さい頃からSHERMAN BROTHERSが作ったディズニーアニメの音楽がすごく好きだったが、今でも聴くたびに感嘆する。歌詞の内容やライムも良いし、ストーリーのひとつの流れを正確に担当するのと同時に、音楽的に持っていかなければならないものはまた完璧に持っていく。そしてアイドルの歌の中ではシム・ウンジさん、キム・ジンファンさん、そしてKenzieさんの作品がすごく好きだ。特にKenzieさんが書かれた少女時代の「彼女」という曲は、私の基準ではアイドルの歌詞の定石だ。「馬鹿になるの ご飯をこぼすの」という部分で、頭を殴られたような気分だった。その他にもアイユの「金曜日に会いましょう」は初めて聴いた時自分が書いている歌詞がすごく恥ずかしくて作業をストップさせたくらいだったし、最近ではSEVENTEENの歌詞に目が行く。その年代だけが書くことのできる、私の頭からは絶対に出てこない表現とエナジーがとても新鮮で羨ましい。



本人は、どんな作詞家として記憶されたいか。

ジョンガンジー:記憶に残らない作詞家でありたい。だから芸名も変え続けているし。ただ、生きて行きながらある瞬間と感情に出会ったとき、「あぁ、こんな歌詞の歌があったな」と人々が一行思い出すことのできる、そんな歌詞を書く作詞家になりたい。



これからは作品もさらに頻繁に見ることができるだろうか?

ジョンガンジー:実は、専門的に作詞をする人ではないので計画はしていない。先程言ったように、依頼自体も多くないし、私が思うに、満足できなかった歌詞が出てくれば、依頼が来るほど作品も提出できずにいる。いつも「私は作詞の才能が無いんだな」と思っているので、作品ごとに「これが最後」だという気持ちで歌詞を書く。けれどこれからは、能力さえあるならもっと多くの作品を残してみたいとは思う。そうなったらきっと、親戚の子ども達と話すことももう少し多くなるかな(笑)。









大本命ガンジー様...!

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